法律学研究支援室

判例 H16.07.13 第三小法廷・決定 平成12(あ)216 業務上過失致死被告事件(第58巻5号360頁)

判示事項:
 時差式信号機の設置された交差点での右折進行と対向直進車両の運転についての信頼の原則

要旨:
 自動車運転者が,時差式信号機の設置された交差点を右折進行するに当たり,時差式信号機であることの標示がなかったとしても,自己の対面する信号機の表示を根拠として,対向車両の対面信号の表示を判断し,それに基づき対向車両の運転者がこれに従って運転すると信頼することは許されない。

参照・法条: 刑法(平成13年法律第138号による改正前のもの)211条前段

内容:
件名  業務上過失致死被告事件 (最高裁判所 平成12(あ)216 第三小法廷・決定 棄却)
原審  H11.12.27 東京高等裁判所 (平成11(う)822)

主    文
 本件上告を棄却する。

理    由

 弁護人工藤昇ほかの上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,事実誤認,単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

 なお,原判決の認定によれば,被告人は,普通乗用自動車を運転し,本件交差点を右折するため,同交差点手前の片側2車線の幹線道路中央線寄り車線を進行中,対面する同交差点の信号が青色表示から黄色表示に変わるのを認め,さらに,自車の前輪が同交差点の停止線を越えた辺りで同信号が赤色表示に変わるのを認めるとともに,対向車線上を時速約70ないし80qで進行してくるA運転の自動二輪車(以下「A車」という。)のライトを,前方50m余りの地点に一瞬だけ見たが,対向車線の対面信号も赤色表示に変わっておりA車がこれに従って停止するものと即断し,A車の動静に注意することなく右折進行し,実際には対面する青色信号に従って進行してきたA車と衝突したというのである。以上のような事実関係の下において,被告人はA車が本件交差点に進入してくると予見することが可能であり,その動静を注視すべき注意義務を負うとした原判断は,相当である。所論は,本件交差点に設置されていた信号機がいわゆる時差式信号機であるにもかかわらず,その旨の標示がなかったため,被告人は,その対面信号と同時にA車の対面信号も赤色表示に変わりA車がこれに従って停止するものと信頼して右折進行したのであり,そう信頼したことに落ち度はなかったのであるから,被告人には過失がないと主張する。しかし,【要旨】自動車運転者が,本件のような交差点を右折進行するに当たり,自己の対面する信号機の表示を根拠として,対向車両の対面信号の表示を判断し,それに基づき対向車両の運転者がこれに従って運転すると信頼することは許されないものというべきである。

 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田宙靖)

この判例に関する評釈

「時の判例」 大野勝則(最高裁判所調査官) ジュリスト1287号124頁(2005年)
「最高裁新判例紹介」 法律時報77巻4号103頁

特に指定がないものは、最高裁判所判決です。
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