法律学研究支援室

判例 平成15年12月18日 第二小法廷決定 平成15年(あ)第537号 有価証券偽造,同行使,公正証書原本不実記載,同行使,有印私文書偽造,同行使被告事件

要旨: 司法書士に対し金銭消費貸借契約証書に基づく公正証書の作成の代理嘱託を依頼するに際し偽造の同契約証書を真正な文書として交付する行為は偽造私文書行使罪にいう「行使」に当たる

内容:  件名 有価証券偽造,同行使,公正証書原本不実記載,同行使,有印私文書偽造,同行使被告事件 (最高裁判所 平成15年(あ)第537号 平成15年12月18日 第二小法廷決定 棄却) 原審 大阪高等裁判所 (平成14年(う)第554号)

主    文

       本件上告を棄却する。当審における未決勾留日数中180日を第1審判決判示第3及び第4の罪の刑に算入する。当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理    由

 弁護人矢野京介の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,所論引用の判例が事案を異にして本件に適切でなく,その余は,事実誤認,単なる法令違反,量刑不当の主張であり,被告人本人の上告趣意のうち,憲法38条1項,2項違反をいう点は,記録を調べても被告人の供述の任意性を疑うべき証跡は認められないから前提を欠き,その余は,判例違反をいう点を含め,実質は事実誤認,単なる法令違反,量刑不当の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。

 なお,司法書士に対し偽造文書を交付した場合に偽造有印私文書行使罪が成立するかどうかについて職権で判断する。

 原判決が是認した第1審判決の認定によれば,被告人は,Aと共謀の上,平成9年8月上旬ころ,千葉県松戸市所在の司法書士事務所において,行使の目的で,ほしいままに,C株式会社を貸主,株式会社Dを借主として5億円借り受けた旨の同会社を債務者とする内容虚偽の金銭消費貸借契約証書1通を偽造し,そのころ,同所において,司法書士Bに対し,同証書に基づく公正証書の作成の代理嘱託を依頼する際,これをあたかも真正に成立したもののように装って交付した,というのである。

 以上の事実関係の下では,被告人らが司法書士に対し上記依頼をするに際して偽造文書である上記金銭消費貸借契約証書を真正な文書として交付した行為は,同証書の内容,交付の目的とその相手方等にかんがみ,文書に対する公共の信用を害するおそれがあると認められるから,偽造文書の行使に当たると解するのが相当である。

 したがって,被告人に対し偽造有印私文書行使罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判決の判断は正当である。

 よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項本文,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 滝井繁男 裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫)

この判例に関する評釈

「時の判例」 山田耕司(最高裁判所調査官) ジュリスト1268号209頁(2004年)
「時の判例」 今井猛嘉(法政大学教授) 法学教室288号102頁(2004年)
「最新判例紹介」 法律時報76巻7号144頁

特に指定がないものは、最高裁判所判決です。
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