法律学研究支援室


参政権と議員定数不均衡
 参政権とは、国民が主権者として国の政治に参加する権利のことを言う。参政権の内では、議員を選挙する選挙権が最も一般的で重要なものである。
選挙の自由・公正と効果的な代表を実現するために、選挙に関する基本原則がある。すなわち、普通選挙、平等選挙、自由選挙、秘密選挙、直接選挙である。このうち、特に重要なのは、普通選挙と平等選挙である。普通選挙とは選挙権を得るために国籍、年齢以外を要件としない選挙のことで、平等選挙とは一人一票を原則とする選挙の事をである。
 では、平等選挙は、投票の価値的平等をも意味するのであろうか。これに関して通説・判例ともに平等選挙は、投票の価値の平等も含まれるとしている。
 ここで、議員定数不均衡の問題が出てくる。議員定数不均衡問題とは、国会議員選挙において各選挙区の議員定数の配分に不均衡があり、そのため、人口数との比率において、選挙人の投票価値に不平等が存在する事である。選挙権や投票の価値の平等は、民主主義を支える重要な権利であるから、一票の重みの較差はできるだけ小さくしなければならない。学説では、一票の重みの較差が二倍以上に拡大すると違憲であると言う説が通説であるが、最高裁判例では明確な基準が示されていない。
 最高裁は、「投票の価値の平等は、憲法の原則からして望ましいところであるが、選挙権の共有に極端な不平等を生じさせるような場合でない限り、定数配分は立法政策上の問題」と判断していたが、昭和51年判決で「国民は全ての政治的価値において平等であるべきで、選挙権の内容、すなわち、各選挙人の投票の価値の平等もまた、憲法の要求するところである。投票の価値の不平等が、国会において通常考慮しうる諸般の要素を斟酌しても尚、一般的に合理性を有するとはとうてい考えられない程度に達していて、かつ、人口の変動の状態を考慮して合理的期間内における是正がなされない場合、違憲となる」として当該衆議院選挙を違憲と判断して以降、次々と衆議院選挙に関して違憲判決が出されるようになった。参議院に関しては、半数交代制による定数偶数配分などを考慮して比較的立法府の裁量権を広範に認めている。
 投票の価値の平等を認め、著しい価値の不平等に関して、違憲判決を出した事は評価できる事であるが、どの程度の較差が違憲であるのかの基準が不明確である事、立法府の裁量を広く認めすぎている事、選挙を違憲としながらも選挙を有効としている事など、問題点も少なくない。憲法の要請に照らして、どの程度の較差が違憲であるのかを具体的に示し、それが守られなかった場合には選挙を無効にすると言う事が必要であると思われる。

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