法律学研究支援室


公務員の労働争議行為の禁止
 憲法28条は、勤労者の団結権、団体交渉権、団体行動権を規定している。ここで、公務員について、公務員という性質上労働基本権が認められるかが問題となる。
 判例は、二度の判例変更を経て、公務員の労働基本権を厳しく全面的に制限する立場に立っている。  1.昭和20年代から30年代にかけての判例では、「公務員は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、かつ職務の遂行に当たっては全力をあげてこれに専念しなければならない性質のものであるから、労働基本権についても、一般に勤労者とは違って特別の取り扱いを受けることが有るのは当然である。」として、公務員の労働基本権の制限を「国民全体の奉仕者」、「公共の福祉」を理由に合憲とした。
 2.昭和40年代前半の判例では、「憲法15条を根拠として、公務員に対して労働基本権を全て否定するような事は許されない。公務員、または、これに準ずる者は、その担当する職務に応じて、私企業における労働者と異なる制約を内包しているにとどまる。」、「争議行為と言っても、種々の様態のものがあり、公務員の具体的な行為が禁止の対象たる争議行為に該当するかどうかは、争議行為を禁止する事によって保護しようとする法益と、労働基本権を尊重し保障する事によって実現しようとする法益との比較衡量により適切に調整されるべきで、さらに、禁止の対象たる争議行為に該当するとしても、ただちに刑事罰を持って望むべき違法性につながるものではない。」とし、労働基本権の制限を必要最小限にとどめ、公務員にもできる限りの労働基本権を認めようとした。後者の判例は、公務員の争議行為を、違法なものとそうでないもの、違法な場合でも違法性の強いものと弱いものとに区別した点で、「二重のしぼり」と言われている。
 3.昭和40年代後半の判例では、「憲法15条を根拠に一切の公務員の労働基本権を否定する事は許されないのであるが、これを根拠に必要やむを得ない限度の制限を加える事は、十分合理的理由があると言える。公務員の勤務条件は政治的、財政的、社会的な配慮により適当に配置されなければならず、しかも、その決定は民主国家として立法府によって論議の上なされるべきで、争議行為の圧力による強制を容認する余地は全く存在しないのである。公務員の争議行為の違法性の強弱または社会的許容性有無を論じる事は容認できない。」として、公務員の労働基本権の制限を「民主主義」を理由に合憲とした。
 さて、1と3は、労働基本権を認めない点で同種の判例と言える。しかし、1では、「公共の福祉」(憲法第15条)を理由に、当然制限を受けるとしているが、3では、憲法第15条のみを理由として労働基本権を制限してはならないとした上で、「民主主義」を理由にその制限を認めている点で、大きく異なるのである。
 今、政府では公務員の労働基本権を認める方向で議論が進んでいるようである。議論の進展を注意深く見守っていきたい。

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