法律学研究支援室


争議行為と賃金
 ストライキに参加した労働者は、その期間中は労働義務を履行しなかったのだから、賃金請求権は発生しない(ノーワーク・ノーペイの原則)。
 では、スト不参加者の賃金は、賃金請求権を有するか。とりわけ、工場の機能が停止した場合など、ストライキによって、スト不参加者の業務が客観的に存在しなくなった場合が問題となる。この場合、労働契約上の危険負担の問題となるが、使用者に帰責自由が認められるかが問題となる。
 まず、ある労働組合の一部の組合員だけがストライキを行う部分ストの場合はどうだろうか。
 思うに、部分ストの場合、スト参加者と不参加者に組織的一体性がみとめられる。そして、ストライキは労働者の争議権の行使であり、使用者はこれに介入できないし、また、団体交渉においていかなる回答をするかは使用者の自由であるから、使用者には帰責自由が認めらないと解する。
 よって、部分ストの場合には、賃金請求権は発生しない。
 それでは、別組合員や非組合員などが存在する場合(一部スト)において、別組合員や非組合員に賃金請求権が発生するか。
 この点、判例は、否定する(ノースウエスト航空事件)。しかし、一部ストの場合には、スト参加者と不参加者との間に組織的一体性がなく、自らの利益を代表しているのではない者の行為によって賃金請求権を失うのでは、不参加者に対して著しい不利益となる。また、不参加者には、ストライキに何の関係もない以上、争議対等の原則は妥当しない。
 したがって、一部ストにおいて、別組合員や非組合員に賃金請求権が発生すると解する。
 では、休業手当の支払義務(労基法26条)は発生するか。この規定は、民法536条2項の債権者の帰責自由を拡大した規定であり、この帰責事由には、不可抗力に該当しない限り、「使用者側に起因する経営、管理上の障害」がすべて含まれると解されるところ、ストによる労務の履行不能が使用者の帰責事由にあたらないかが問題となる。
 まず、部分ストについては、不参加者と組織的一体性を有する者によるストライキである以上、使用者の帰責事由というよりは、不参加者の所属する組合が自らの主体的判断とその責任に基づいて行ったというべきである。
 したがって、部分ストの場合、使用者に帰責事由はなく、休業手当の支払義務は発生しない。

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