法律学研究支援室


組合活動の正当性
 わが国の労働組合は、企業別に組織された企業別労働組合であるため、企業内で展開されるのが普通であり、組合活動のほとんどは企業施設を用いて行われる。しかし、これらの活動は、使用者の企業施設に対して有する物権(施設管理権)と抵触しうる行為である。そこで、組合活動と企業の施設管理権との調和が問題となる。
 この点、判例は、施設管理権の上位概念として企業秩序定立・維持権限を肯定し、労働組合による企業施設の利用が使用者との合意に基づいて行われるべきとの前提に立ち、労働組合が使用者の許諾を得ないまま企業施設を利用して組合活動を行うことは、その利用を許さないことが施設管理権の濫用と見とめられる特段の事情がない限り正当性を有しないとする。しかし、これでは、許諾を得ない組合活動のほとんどが正当性を有しないことになり、団体行動権を過度に軽視する結果となる。
 また、組合は、団結権(憲法28条)に基づき、企業施設を一定範囲で利用する権利を有し、使用者はこれを受任する義務を負うとする説がある(受忍義務説)。しかし、憲法28条の規定から、私法的権利義務を肯定することには飛躍があり、妥当でない。
 思うに、使用者の許諾を得ないビラ貼りは本来違法であるが、それが団体行動権の正当な行使と認められる場合は、違法性が阻却され、懲戒責任を否定されると解する。そして、団体行動権の正当な行使といえるかどうかは、活動の態様や施設の性質等に照らし、組合活動としての必要性と、業務上・施設管理上の支障を衡量して判断すべきである。

 次に、ワッペン着用など、組合活動が労働時間内に行われる場合があるが、認められるだろうか。
 この点、労働者は、労働契約に基づき労働義務を負うことから、原則として、労働時間内の組合活動は認められない。
 ただし、労働時間内の組合活動が例外的に許される場合があると解する。@労働協約や観光によって組合活動が許容されている場合、A使用者が承諾した場合、B組合活動が労働義務の履行と矛盾なく両立する場合、の3つがあげられる。ワッペン着用はBに属する。そして、Bに関しては、対立があり、業務に支障が生じていなくても、労働と無関係の行動を行ったものとして労働義務違反となるかが問題となる。
 判例は、労働義務を厳格に解し、職務専念義務を「職員がその勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならない」義務と定義し、どう義務違反が成立するためには、業務上の実害の発生を要せず、精神的注意力のすべてが職務遂行に向けられたものとはいえないという程度(抽象的危険)で足りるとする。
 しかし、人の内面的精神まで規律する法的義務を認めるのは妥当ではない。
 そこで、職務専念義務は、労働者が労働契約に基づき、その職務を誠実に遂行しなければならないという義務と解し、同義務と支障なく両立し、業務を具体的に阻害することのない行動は同義務に違反しないと解するべきである。

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