法律学研究支援室


雇用平等
 わが国の労働法は伝統的に、女性を「保護」の対象としてきた。しかし、女性の就業率増加や国連「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の採択等を契機に、雇用機会均等法の制定・労働基準法の改正がなされた。これは、平等を進め、女性保護を緩和し、母性保護を強化するものであった。
 しかし、雇用機会均等法は、1、司法救済を予定せず、法的強制力のない努力義務規定が多用され、紛争の自主的解決と行政救済に委ねるとした点、2、義務の内容を明確化するための指針が不十分であり、規範内容・基準内容が不明確なものに留まった点、3、努力義務規定において、救済の主体となるべき行政救済が、調停の要件を双方の同意とした事、調査権限・救済命令の権限がない事など、不十分なものであった点、4、女性のみを保護する片面性を有したため、女性の職域固定化を肯定してしまった点において、欠陥を抱えるものであった。
 そこで、1997年、雇用機会均等法が改正され、上記欠陥の解消が図られた。
まず、平等の徹底・機会の平等を図り、募集・採用・配置・昇進に関する規定を努力義務規定から強行規定に変更した上、指針も強化された。また、一方的申請による調停も可能となった。これにより、義務が明確となり行政救済も実効性もち、司法救済も可能となった。
そして、片面性を維持しつつも修正し、女性のみ対象措置を原則禁止としつつ、女性が相当程度少ない職場(指針:男性の4割未満)への、女性の優先採用・配置・昇進・教育訓練・受験の奨励を適法とするなどのポジティブアクションが導入された。これにより、「望ましい片面性」の実現が図られる。また、ポジティブアクション導入に対し国は援助・相談を行うことができる。
 一方、労働基準法も改正された。時間外労働・深夜業の禁止・制限の規定が廃止され女性保護はほぼ撤廃された。そして、時間外労働・深夜業につき、就業規則・労働協約で女性のみを制限したり、上限時間を設定する規定は、均等法違反で無効となる。
他方で、母性保護は、産前産後休業の強化により、いっそうの強化をみることとなった。

トップページに戻る


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送