法律学研究支援室


犯罪学の展開
 犯罪学誕生以前には、大きく魔人論と自然主義的経験論があった。魔人論は犯罪は悪魔の仕業であるとする説であり、悪魔祓いの儀式や魔女裁判などが行われた。自然主義的経験論は、アリストテレスらによってなされ、経験的に観察した知見に基づいて犯罪の素質・環境的原因を探ろうとするものである。
 実証主義犯罪学の祖といわれるロンブローゾは、犯罪者を調査し、具体的な事実に基づいて生来性犯罪者説を唱えた。生来性犯罪者説は、犯罪人類の存在、身体的・精神的特徴・野蛮な先祖がえりという3つの仮説からなる。ロンブローゾは、ダーウィンの進化論、犯罪統計学、骨相学の影響を受け、生来性犯罪者説を提唱したと言われている。この犯罪人類学は、生まれつきの犯罪者に応報刑を課しても無駄であるとして教育刑を主張した。
 こうした犯罪人類学は多くの批判の対象となった。ゴーリングは、生来性犯罪者説がロンブローゾの直感的な観察に基づくもので科学的でないことを統計学的数値によって示した。ただし、ゴーリング自身、犯罪人類学の域を出るものではなかった。また、犯罪の環境要因を重視するラカッサーニュをはじめとするリヨン環境学派は、「社会は犯罪の培養器であり、犯罪者はバクテリアである」と主張した。ただ、ラカッサーニュも犯罪人類学を完全に否定したわけではなかった。
犯罪人類学は、犯罪生物学へと発展し、家計の研究、双生児研究、体系の研究、内分泌の研究などが行われた。
 精神医学者モレルは変質説を唱えたが、この説とロンブローゾの生来性犯罪者説から、犯罪心理学が生まれた。また、リヨン学派のタルドによる模倣説によって犯罪心理学の基礎が築かれた。犯罪心理学は、精神測定学派、精神病質学派、精神分析学派に分かれる。
デュルケムは、犯罪は「集合意識」を侵害する行為であり、犯罪は避けることのできない正常な社会現象であって、有用で、時に健全なものであるとして、フランス社会学派を形成した。デュルケムは、機械的社会から有機的社会への転換期等にはアノミーが生じ、犯罪などの社会病理現象が発生するとした。また、リストは、犯罪の社会的要因を重視し、「最良の刑事政策は最良の社会政策である」として刑事社会学の中核となった。さらに、ボンガーら社会主義犯罪学派は、犯罪は経済的条件特に貧困によるものであると主張し、社会主義経済が実現すれば犯罪の誘引は消滅すると主張した。
こうした犯罪社会学理論はアメリカで発展し、犯罪現象を生態学の視点から分析するシカゴ学派が形成された。ショウ・マッケイは同心円図により非行の分布をしめした。これは、生態学の侵入→支配→のっとりという変化過程に一致しており、アノミー論の流れをくむ社会解体論を実証することとなった。〈社会変動→社会統制の弛緩→犯罪増加〉 シカゴ学派は、犯罪の環境的な要因の重要性を指摘し、優生学的な思潮を否定した点に高い評価がされる。
犯罪社会学は、3つのアプローチからなる。すなわち、社会構造アプローチ、社会過程アプローチ、社会葛藤アプローチである。
社会構造アプローチは、緊張理論と呼ばれるが、マートンのアノミー論がある。マートンは、社会の人々に共通する目標がそれを達成するための合法的な手段との間に不協和音を生じることをアノミーと呼び、遵法意識の衰退した社会構造の中で犯罪が生じるとした。また、コーエンは非行副次文化論を唱えた。クロワード・オーリンは、アノミー論と非行副次文化論を統合し分化的機会構造論を提唱した。すなわち、個人が目標を達成する際に合法的手段を取るか否かは、その者がどの程度非行副次文化に接触し非行を学習する機会を有していたかによって決まるとした。
社会過程アプローチは、タルドの模倣説の流れをくむものであるが、サザランドの分化的接触理論を唱えた。分化的接触理論は9つの命題からなり、犯罪行動は学習され、コミュニケーションの過程でなされるものとした。「朱に交われば赤くなる」と。また、グレーザーは、「個人が犯罪行動に接触して、それに同一化したときに犯罪にいたる」とした。「朱に惚れ込めば赤くなる」と。
社会葛藤アプローチは、セリンの文化葛藤論とクイニーの闘争理論の2つの系列がある。
セリンは、犯罪の原因は、文化葛藤にあるとした。第1次的文化葛藤と第2次的文化葛藤に分かれるとした。クイニーは、社会実体論を唱え、法は支配階級の道具であり、犯罪は権力者によって作られ、犯罪は権力者の利益に反する行為であるとした。これはニュークリミノロジーへとつながる。

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