法律学研究支援室


生命・身体の自由の保障に関する憲法規定と行政手続
 生命・身体の自由の保障に関しては、まず、憲法第18条において「奴隷的拘束および苦役からの自由」を規定し、第31条以下において詳細な規定を置いている。
憲法第18条は、人は自由な人格者であって、自己決定権を持つと言う事を保障しているものであり、この規定は私人間にも直接効力を有する。
 第31条では適正な法律手続きによらなければ刑罰を科されない事を規定している。「適正な」とは判例によって示されたものであるが、その意味は、告知、弁解、防禦の機会を与えると言う事である。さらに、31条は罪刑法定主義の現われと解釈され広く人権の手続的保障をしていると解されている。
 第33条では現行犯でない限りは逮捕令状なしに逮捕されない事を規定している。逮捕の要件として裁判所と言う第三者を挟む事によって国家の恣意的な自由の侵害を阻止しようとしている。
例外として緊急逮捕があるが、最高裁は「厳格な制約の下に、罪状の重い一定の犯罪のみについて、緊急やむを得ない場合に限り、逮捕後直ちに裁判官の審査を受けて逮捕状の発行を求める事を条件に、被疑者を逮捕状なしに逮捕する事は第33条に違反しない」と判示した。
 第34条では抑留、拘禁という身体の拘束に関する規定を置いている。また、公開法廷で拘禁理由の開示を求める権利を保障する事で、不当な拘禁の防止がはかられている。
 このように、生命・身体の自由の保障に関する規定は、刑事裁判手続にのみ適用されるようであるが、その趣旨は行政手続にも及ぶと解さている。
最高裁判所は、「過料の裁判」において、「過料は、非訴訟手続方によって裁判所が科し、その手続きは違法・不当に過料を科せられる事がないよう十分配慮しているから、過料の裁判は、法律の定める適正な手続きによる裁判といえる。」と判示し、一種の行政処分としての性質を有する過料の裁判にも憲法第31条の適正手続を満たすべきだとした。また、個人タクシーの免許申請の審査に関する裁判において、「多数のうちから少数の特定の者を、具体的個別的事実関係に基づき選択して免許の許否を決しようとする行政庁としては、事実の認定に付き行政庁の独断を疑う事が客観的にもっともと認められるような不公正な手続きをとってはならない」とした上で、「申請人に対し、その主張と証拠の提出の機会を与えなければならず、また、申請人は公正な手続きによって免許の許否似つき判定をうくべき法的利益を有する」と判示した。したがって、行政手続は、不利益処分、利益処分共に憲法31条の適正手続をみたさなけらばならない。
 なお現在は、行政手続法によって適正な手続が規定されるに至っている。

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