法律学研究支援室

事件番号 平成17(あ)378
事件名 現住建造物等放火,殺人,詐欺未遂被告事件
裁判年月日 平成18年11月07日
法廷名 最高裁判所第三小法廷
裁判種別 判決
結果 棄却
判例集巻・号・頁
原審裁判所名 大阪高等裁判所??
原審事件番号 平成11(う)678
原審裁判年月日 平成16年12月20日
判示事項
裁判要旨 刑訴法328条により許容される証拠は,信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が,同人の供述書,供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。)等の中に現れている部分に限られる
参照法条 第三百二十八条
第三百二十一条乃至第三百二十四条の規定により証拠とすることができない書面又は供述であつても、公判準備又は公判期日における被告人、証人その他の者の供述の証明力を争うためには、これを証拠とすることができる。
全文

主文

本件上告を棄却する。 当審における未決勾留日数中300日を本刑に算入する。

理由

1弁護人乘井弥生ほかの上告趣意のうち,刑訴法328条に関する判例違反をいう点について 記録によれば,(1)第1審において,証人足立勝美の証言の後,弁護人が,消防司令補北村輝夫作成に係る「聞込み状況書」(以下「本件書証」という。)を証拠請求し,検察官の不同意意見を受けて,刑訴法328条による証拠採用を求めたが,第1審裁判所が,提示命令によりその内容を確認した後,同条の書面には当たらないとして請求を却下したこと,(2)本件書証には,上記北村が,上記足立から火災発見時の状況について聞き取ったとされる内容が記載されており,その内容には上記証言の内容とは異なる点が含まれていたこと,(3)本件書証は,聞き取りの相手に記載内容を読み聞かせ,署名・押印を求める形式になっておらず,実際上もそのような手続は取られていないことが認められる。
原判決は,第1審裁判所がした上記証拠請求却下に関する訴訟手続の法令違反の主張に対して,刑訴法328条により許容される証拠は,現に証明力を争おうとする供述をした者の当該供述とは矛盾する供述又はこれを記載した書面に限られると解されるところ,本件書証は,上記北村の供述を記載した書面であるから,同条の許容する証拠には当たらないとして,第1審の証拠請求却下を是認する判断をした。
所論は,原判決は,供述の証明力を争う証拠としてであれば刑訴法328条によりすべての伝聞証拠が許容される旨の判断を示した福岡高等裁判所昭和24年(つ)第908号同24年11月18日判決(高刑判決特報1号295頁)と相反する判断をしたものである旨主張する。
確かに,所論引用の判例は,刑訴法328条が許容する証拠には特に限定がない旨の判断をしたものと解され,これに限定があるとして本件書証は同条で許容する証拠に当たらないとした原判決は,所論引用の判例と相反する判断をしたものというべきである。
しかしながら,刑訴法328条は,公判準備又は公判期日における被告人,証人その他の者の供述が,別の機会にしたその者の供述と矛盾する場合に,矛盾する供述をしたこと自体の立証を許すことにより,公判準備又は公判期日におけるその者の供述の信用性の減殺を図ることを許容する趣旨のものであり,別の機会に矛盾する供述をしたという事実の立証については,刑訴法が定める厳格な証明を要する趣旨であると解するのが相当である。
そうすると,刑訴法328条により許容される証拠は,信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が,同人の供述書,供述を録取した書面(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。),同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れている部分に限られるというべきである。
本件書証は,前記足立の供述を録取した書面であるが,同書面には同人の署名押印がないから上記の供述を録取した書面に当たらず,これと同視し得る事情もないから,刑訴法328条が許容する証拠には当たらないというべきであり,原判決の結論は正当として是認することができる。
したがって,刑訴法410条2項により,所論引用の判例を変更し,原判決を維持するのを相当と認めるから,所論の判例違反は,結局,原判決破棄の理由にならない。
2同上告趣意のその余の主張について所論は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,再審事由の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論にかんがみ調査しても,同法411条を適用すべきものとは認められない。
よって,同法408条,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男 裁判官 那須弘平)

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