法律学研究支援室

判例 H15.12.09 第二小法廷・決定 平成13(あ)899 詐欺被告事件(第57巻11号1088頁)

判示事項:
 甲が乙を欺いて金員を交付させるに当たり甲及び乙が別途丙を欺いて丙から甲に上記金員を交付させた場合と甲の乙に対する詐欺罪の成否

要旨:
 甲が乙から儀式料名下に金員を詐取するに当たり,甲の意を受けた乙において,甲から商品を購入したように仮装して信販業者丙との間で立替払契約を締結し,同契約に基づき商品購入代金として丙から甲に金員を交付させる方法により儀式料を支払った場合には,甲及び乙の丙に対する行為が詐欺罪を構成するかどうかにかかわらず,甲の乙に対する行為は詐欺罪を構成する。

参照・法条: 刑法246条1項

内容:
件名  詐欺被告事件 (最高裁判所 平成13(あ)899 第二小法廷・決定 棄却)
原審  H13.04.26 仙台高等裁判所 (平成12(う)20)

主    文
本件上告を棄却する。
当審における未決勾留日数中840日を本刑に算入する。

理    由

 弁護人門西栄一の上告趣意は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

 なお,所論にかんがみ,第1審判決判示(三)の犯罪事実について,職権で判断する。

 1 原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,本件に関する事実関係は,次のとおりである。

 (1) 被告人は,他の1名と共謀の上,病気などの悩みを抱えている被害者らに対し,真実は,被害者らの病気などの原因がいわゆる霊障などではなく,「釜焚き」と称する儀式には直接かつ確実に病気などを治癒させる効果がないにもかかわらず,病気などの原因が霊障であり,釜焚きの儀式には上記の効果があるかのように装い,虚偽の事実を申し向けてその旨誤信させ,釜焚き料名下に金員を要求した。

 (2) そして,被告人らは,釜焚き料を直ちに支払うことができない被害者らに対し,被害者らが被告人らの経営する薬局から商品を購入したように仮装し,その購入代金につき信販業者とクレジット契約(立替払契約)を締結し,これに基づいて信販業者に立替払をさせる方法により,釜焚き料を支払うように勧めた。これに応じた被害者らが上記薬局からの商品売買を仮装の上クレジット契約を締結し,これに基づいて信販業者が被告人らの管理する普通預金口座へ代金相当額を振込送金した。

 2 【要旨】以上の事実関係の下では,被告人らは,被害者らを欺き,釜焚き料名下に金員をだまし取るため,被害者らに上記クレジット契約に基づき信販業者をして立替払をさせて金員を交付させたものと認めるのが相当である。

 この場合,被告人ら及び被害者らが商品売買を仮装して信販業者をして立替金を交付させた行為が信販業者に対する別個の詐欺罪を構成するか否かは,本件詐欺罪の成否を左右するものではない。

 したがって,被告人に対し本件詐欺罪の成立を認めた原判断は,正当である。

 よって,刑訴法414条,386条1項3号,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫 裁判官 滝井繁男)

この判例に関する評釈

「時の判例」 林美月子(立教大学助教授) 法学教室287号104頁(2004年)
「最新判例紹介」 法律時報76巻7号140頁
木村光江(首都大学東京教授) ジュリスト1291号169頁平成16年度重要判例解説(2005年)

特に指定がないものは、最高裁判所判決です。
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