法律学研究支援室

事件番号 平成17(あ)2113
事件名 わいせつ略取,強盗強姦,強盗強姦未遂,窃盗,道路運送車両法違反,強姦未遂,強姦,わいせつ略取誘拐被告事件
裁判年月日 平成18年08月31日
法廷名 最高裁判所第三小法廷
裁判種別 決定
結果 棄却
判例集巻・号・頁
原審裁判所名 名古屋高等裁判所??
原審事件番号 平成17(う)134
原審裁判年月日 平成17年09月12日
判示事項
裁判要旨 勾留事実に係る罪を含む併合罪関係にある数罪を併合審理して1個の主文による刑を言い渡す場合と刑法21条
参照法条
全文

主文

本件上告を棄却する。

理由

検察官の上告趣意は,判例違反をいうが,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でない。
所論にかんがみ,職権で判断する。
1 被告人は,第1審判示第8の事実と公訴事実の同一性が認められるわいせつ略取,強盗強姦罪の被疑事実により勾留され,勾留中求令状として起訴され,同罪につき新たに発付された勾留状で勾留されたが,同勾留は,その後の数次にわたる勾留期間更新決定により継続されて第1審判決に至った。
その間被告人に対しては,別件勾留中として,いずれも勾留されないまま,合計7回の追起訴がされ,これらの事件は併合審理された。
第1審判決は,第1審判示第1ないし第14の各事実を認定して,勾留された同第8の罪につき有期懲役刑を,勾留されていない同第5の罪につき無期懲役刑をそれぞれ選択するなどした上,これらを刑法45条前段の併合罪と認め,同法46条2項,48条1項により上記無期懲役刑に勾留されていない同第10の罪(法定刑は50万円以下の罰金)の罰金刑のみを併科して,被告人を無期懲役及び罰金15万円に処し,同法21条を適用して,未決勾留日数のうち,400日をその無期懲役刑に,30日を1日5000円に換算して罰金額に満つるまでその罰金刑にそれぞれ算入した。
そして,原判決もこれを維持した。
2 所論は,刑法21条の解釈上,未決勾留日数は勾留された罪の刑を同条にいう「本刑」としてこれに算入すべきものであり,本件では,無期懲役刑が本刑に当たるから,第1審判決がした罰金刑への未決勾留日数の算入を原判決が是認したのは誤りであるという。
そこで検討するに,刑法21条は,裁判所が未決勾留日数の全部又は一部を刑に算入するのが相当であると認める場合に,勾留事実に係る罪に対する刑に算入するのを原則とし,この原則によるのが相当でないと認められる特段の合理的理由があるときには,非勾留事実に係る罪に対する刑に算入することも許す趣旨と解するのが相当である。
そして,刑法は,併合罪関係にある数罪を併合審理して刑を言い渡す場合,その数罪を包括的に評価して,それに対し1個の主文による刑を言い渡すべきものとしているから,勾留事実に係る罪を含む併合罪関係にある数罪についての刑に未決勾留日数を算入する限り,上記原則に従ったものであり,この理は,本件のように懲役刑に罰金刑を併科するものであるときでも異なるものではないというべきである。
そうすると,本件は,認定された各罪が併合罪関係にある事案であるから,勾留されていない事実に係る罰金刑に,併合審理された他の事実に係る未決勾留日数を算入した第1審判決を維持した原判決には,何ら違法はないというべきである。
よって,刑訴法414条,386条1項3号,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 藤田宙靖 裁判官 上田豊三 裁判官 堀籠幸男 裁判官那須弘平)

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