法律学研究支援室

事件番号 平成17(あ)2535
事件名 窃盗,出入国管理及び難民認定法違反
裁判年月日 平成18年08月30日
法廷名 最高裁判所第二小法廷
裁判種別 決定
結果 棄却
判例集巻・号・頁
原審裁判所名 東京高等裁判所??
原審事件番号 平成17(う)1974
原審裁判年月日 平成17年10月25日
判示事項
裁判要旨 併合罪関係にある数罪を併合審理して1個の主文による刑を言い渡す場合と刑法21条にいう「本刑」
参照法条
全文

主文

本件上告を棄却する。

理由

検察官の上告趣意は,判例違反をいうが,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でない。
なお,所論にかんがみ,第1審判決がした未決勾留日数の算入の当否につき,職権で判断する。
1 被告人は,第1審判示第2の1の窃盗の事実により勾留のまま起訴され,次いで,同第2の2の窃盗の事実により勾留のまま起訴され,さらに,同第1の不法在留の事実により起訴されたが,同事実については勾留されていなかった。
これらの事件は併合審理されたが,第1審判決は,上記各事実を認定し,不法在留罪については懲役刑及び罰金刑を選択した上,これらを刑法45条前段の併合罪と認めて,懲役刑につき同法47条本文,10条による処理をするととともに同法48条1項によりこれに上記罰金刑を併科し,その刑期及び所定金額の範囲内で被告人を懲役3年・5年間執行猶予及び罰金30万円に処し,同法21条を適用して未決勾留日数のうち60日を1日5000円に換算し,上記罰金刑に算入した。
そして,原判決も,第1審判決の上記未決勾留日数の算入を是認した。
2 所論は,刑法21条の解釈上,未決勾留日数は勾留事実に係る罪の刑を同条にいう「本刑」としてこれに算入すべきものであって,本件では懲役刑が本刑に当たるから,原判決が第1審判決のした罰金刑への未決勾留日数の算入を是認したのは誤りであるという。
しかし,刑法は,併合罪関係にある数罪を併合審理して刑を言い渡す場合,その数罪を包括的に評価して,それに対し1個の主文による刑を言い渡すべきものとしているから,その刑が刑法21条にいう「本刑」に該当すると解すべきであり,この理は,その刑が懲役刑と罰金刑を併科するものであるときでも異なるところはないというべきである。
以上によれば,勾留事実に係る罪を含む併合罪関係にある数罪についての刑に未決勾留日数を算入する限り,刑法21条にいう「本刑」に算入したこととなるのであって,勾留されていない事実に由来する罰金刑に対し,これと併合罪として処断された他の事実に係る未決勾留日数を算入した第1審判決を原判決が是認したことにつき,何ら違法はない。
よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

なお,裁判官古田佑紀の補足意見がある。

裁判官古田佑紀の補足意見は,次のとおりである。
私は,法廷意見と見解をともにするものであるが,なお,非勾留事実に係る刑に対する未決勾留日数算入の可否について補足して意見を述べておく。
私は,刑法21条は,未決勾留に係る犯罪事実に対する刑に未決勾留日数を算入することを想定した規定であり,昭和39年1月23日の当審判例(最高裁昭和37年(あ)第2173号同39年1月23日第一小法廷判決・刑集18巻1号15頁)は,同条に関するそのような理解の下に,勾留事実と非勾留事実が併合罪の関係になく,別個の主文で刑が言い渡される場合について,未決勾留日数の算入は勾留されている事実に対する刑に対して行われることが原則であることを明らかにしたものと理解すべきものと考える。
したがって,勾留事実と併合罪又は科刑上一罪の関係にない非勾留事実に係る刑に対する未決勾留日数の算入は,それが合理的である特段の事情が認められる場合に限られると解すべきである。
しかしながら,未決勾留日数の算入は言い渡された刑に対してなされるものであるところ,本件のように非勾留事実が勾留事実と併合罪として処断される場合については,併合罪として処理された勾留事実を含む数個の犯罪事実に対して1個の主文により刑を言い渡すこととされているのであるから,言い渡された刑が,2個以上の主刑を併科する場合であっても,全体として刑法21条にいう「本刑」に該当すると解すべきことは,法廷意見のとおりと考える。
なお,刑法9条の刑種の定めは一般的に刑の種類を定めるものであり,他方,法定刑又は宣告刑はある犯罪事実に対する法的評価であるので,両者は別個の問題であって,刑種の異なる主刑が併科される場合であっても,そのことにより,ある犯罪事実に対する法的評価の一体性が失われるものではないというべきである。
(裁判長裁判官 今井 功 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官中川了滋 裁判官 古田佑紀)

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