法律学研究支援室

判例 平成17年11月21日 第二小法廷判決 平成16(受)1434 損害賠償請求事件

要旨:
 船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効は,民法724条により,被害者が損害及び加害者を知った時から進行する

内容:  件名 損害賠償請求事件 (最高裁判所 平成16(受)1434 平成17年11月21日 第二小法廷判決 棄却)
 原審 東京高等裁判所 (平成15(ネ)4064)

主    文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理    由

 上告代理人木村宏,同田中庸介,同木村政道の上告受理申立て理由について

 1 本件は,被上告人が,上告人に対し,被上告人所有の漁船が上告人所有の貨物船に衝突されて損傷したことによって生じた損害について,不法行為による損害賠償請求権に基づき,その賠償を求める事案であり,同損害賠償請求権の消滅時効の起算点が争点である。

 2 民法724条は,不法行為に基づく法律関係が,未知の当事者間に,予期しない事情に基づいて発生することがあることにかんがみ,被害者による損害賠償請求権の行使を念頭に置いて,債権一般について消滅時効の起算点を規定する同法166条1項の特則を設けたものであり,同法724条が,消滅時効の起算点を「損害及び加害者を知った時」と規定したのは,不法行為の被害者が損害及び加害者を現実に認識していない場合があることから,被害者が加害者に対して損害賠償請求に及ぶことを期待し得ない間に消滅時効が進行し,その請求権が消滅することのないようにするためであると解される(最高裁平成8年(オ)第2607号同14年1月29日第三小法廷判決・民集56巻1号218頁参照)。船舶の衝突によって損害を被った被害者が不法行為による損害賠償請求権を行使する場合においても,同条の趣旨はそのまま当てはまる。

 商法798条1項は,船舶の衝突によって生じた債権は1年を経過したときは時効によって消滅すると規定しているが,消滅時効の起算点については何ら規定するものではなく,消滅時効の期間について民法724条の特則を設けたにすぎないものというべきである。

 したがって,船舶の衝突によって生じた損害賠償請求権の消滅時効は,民法724条により,被害者が損害及び加害者を知った時から進行するものと解すべきである。

 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 今井 功 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官 中川了滋 裁判官 古田佑紀)

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