法律学研究支援室

判例 H15.07.11 第二小法廷・判決 平成13(受)320 持分全部移転登記抹消登記手続等請求事件(第57巻7号787頁)

判示事項:

  不動産の共有者の1人が不実の持分移転登記を了している者に対し同登記の抹消登記手続請求をすることの可否

要旨:

  不動産の共有者の1人は,共有不動産について実体上の権利を有しないのに持分移転登記を了している者に対し,その持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。

参照・法条:

  民法249条,民法252条

内容:

 件名  持分全部移転登記抹消登記手続等請求事件 (最高裁判所 平成13(受)320 第二小法廷・判決 破棄差戻し)

 原審  H12.11.29 名古屋高等裁判所 (平成12(ネ)287)

主    文

       原判決を破棄する。

       本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理    由

 上告代理人吉田允,同大西清,同住田正夫,同中野俊彦の上告受理申立て理由について

 1 原審の確定した事実関係は,次のとおりである。

 (1) 甲は,第1審判決別紙物件目録一ないし四及び七ないし一二記載の各土地(以下「本件土地」という。)を所有していた。

 (2) 甲は,平成5年1月18日に死亡し,甲の子である上告人ら,乙及び丙の4名が共同相続した。

 (3) 平成5年1月25日,本件土地につき,同月18日相続を原因として,上告人ら,乙及び丙の各持分を4分の1とする所有権移転登記がされ,同日代物弁済を原因として,被上告人に対する乙持分全部移転登記(以下「本件持分移転登記」という。)がされた。

 2 本件の主位的請求は,上告人らが,被上告人に対し,乙から被上告人への本件土地の持分の譲渡は無効であるとして,本件持分移転登記の抹消登記手続を求めるものである。

 原審は,次のとおり判断して,上告人らの上記請求を棄却した。

 仮に,乙から被上告人に対する持分の譲渡が無効であり,本件持分移転登記が真実に合致しない登記であるとしても,上告人らの持分権は何ら侵害されていないから,上告人らは,その持分権に基づく保存行為として本件持分移転登記の抹消登記手続を請求することができない。

 3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 【要旨】不動産の共有者の1人は,その持分権に基づき,共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができるところ,不実の持分移転登記がされている場合には,その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じているということができるから,共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し,単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる(最高裁昭和29年(オ)第4号同31年5月10日第一小法廷判決・民集10巻5号487頁,最高裁昭和31年(オ)第103号同33年7月22日第三小法廷判決・民集12巻12号1805頁。なお,最高裁昭和56年(オ)第817号同59年4月24日第三小法廷判決・裁判集民事141号603頁は,本件とは事案を異にする。)。

 4 以上によれば,乙から被上告人に対する本件土地の持分の譲渡が無効であれば,上告人らの主位的請求は認容されるべきである。論旨は理由がある。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判決は破棄を免れない。そこで,上記持分の譲渡の有効性について更に審理判断させるため,本件を原審に差し戻すこととする。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 北川弘治 裁判官 福田 博 裁判官 亀山継夫 裁判官 梶谷 玄 裁判官 滝井繁男)

この判例に関する評釈

「時の判例」 尾島明(元最高裁判所調査官) ジュリスト1261号165頁
「時の判例」 山田誠一(神戸大学教授) 法学教室283号98頁

特に指定がないものは、最高裁判所判決です。
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