主文 本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由 上告人の上告理由について以下に摘示する農業災害補償法(以下「法」という。
)の各条項は,それぞれ別表のものをいう。
1 公共組合である農業共済組合が組合員に対して賦課徴収する共済掛金及び賦課金は,国又は地方公共団体が課税権に基づいて課する租税ではないから,これに憲法84条の規定が直接に適用されることはない。
もっとも,農業共済組合は,国の農業災害対策の一つである農業災害補償制度の運営を担当する組織として設立が認められたものであり,農作物共済に関しては農業共済組合への当然加入制が採られ(法15条1項,16条1項,19条,104条1項),共済掛金及び賦課金が強制徴収され(法87条の2第3項,4項),賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するものであるから,これに憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきであるが,その賦課について法律によりどのような規律がされるべきかは,賦課徴収の強制の度合いのほか,農作物共済に係る農業災害補償制度の目的,特質等をも総合考慮して判断する必要がある。
2 法は,共済事故により生ずる個人の経済的損害を組合員相互において分担することを目的とする農作物共済に係る共済掛金及び賦課金の具体的な決定を農業共済組合の定款又は総会若しくは総代会の議決にゆだねているが(43条1項2号,45条の2,86条1項,87条1項,3項,107条1項),これは,上記の決定を農業共済組合の自治にゆだね,その組合員による民主的な統制の下に置くものとしたものであって,その賦課に関する規律として合理性を有するものということができる。
したがって,上記の共済掛金及び賦課金の賦課に関する法の規定は,憲法84条の趣旨に反しないというべきである。
以上は,最高裁平成12年(行ツ)第62号,同年(行ヒ)第66号同18年3月1日大法廷判決・民集60巻2号登載予定の趣旨に徴して明らかである。
論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田宙靖 裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田豊三 裁判官堀籠幸男)
|